MINI BLOG

2020.05.29

ミニとミニクーパーは違う?ミニクーパーとはどんなクルマ?レースから紐解くミニクーパーの歴史

 

生誕から60年以上の歴史を誇る名車「ミニ」。先日のブログで60周年アニバーサリーモデルについて紹介をしました。

そんな長い歴史のあるミニですが、日本では大多数の方に「ミニ」=「ミニクーパー」と認識されている今日この頃。

 

ミニオーナーからすれば、「ミニ」≠「ミニクーパー」なのですが、残念ながら詳しくない方にはほとんど同一視されています。あくまでクーパーは、ミニの販売グレードの一つですが、しかしながら「ミニ」=「ミニクーパー」が定着してしまっているのは事実です。

 

ミニクーパーというネーミングが定着したのにはそれなりの理由があるのですが、残念ながらその背景を詳しく知っている方は一部のミニファンに限られます。

そこで今日は、「ミニクーパー」とはどんなクルマなのかを、ミニの歴史から紐解いてみたいと思います。

 

 

 

ミニクーパーが生まれた背景

そもそも「ミニクーパー」とは、ミニのエボリューションモデルとして登場した限定車です。このミニクーパーを語るにはミニの歴史を振り返る必要があります。

 

 

1959年にBMCから発売されたミニ(オースチン・セブン&モーリス・ミニマイナー)は、小さいボディでも居住性を確保するため、小径タイヤを車体の四隅へ追いやったスタイルをしていました。

このスタイルが今なお評価される「ゴーカート・フィーリング」と言われるミニ独自のハンドリングを生むことになるのですが、これはあくまでボディ形状から生まれた副産物です。ミニはスポーツカーとして生まれたわけではなく、あくまで石油危機を機に開発された「燃費に優れた大人4人が乗れる小型車」がルーツです。

 

 

そんなミニですが、開発者である「アレック・イシゴニス」の友人で、50年代のF1シーンを席捲した名チューナーの「ジョン・クーパー」によってエボリューションモデルが登場します。

ジョンクーパーは、当時F1で輝かしい成績を収める一方で、サルーンカー(乗用車)レースではロータス勢の後塵を拝していていました。そんな中、1958年に友人であるイシゴニスにミニの試作車を見せられます。ミニに試乗したジョンクーパーが『このハンドリングなら勝てる』と感じ、そこからミニをチューニングした『ミニクーパー』が誕生する事となりました。

 

 

1961年10月に登場したこのミニクーパー、ノーマルミニが848㏄/34馬力だったのに対し、997㏄/54馬力発生するエンジンを搭載。サスペンションやブレーキも強化され、限定1,000台が販売されました。

1000台限定とされた理由の一つはレースのホモロゲーションのため。もう一つはイシゴニスを含む当時のBMC側がスポーツモデルの量産に反対意見を出していたことが背景にあるともいわれいます。イシゴニスはあくまでミニは大衆車であると考え、チューニングマシンの量産化には否定的だったようです。

 

つまり、ミニとミニクーパーは、当初から明確に違うモデルとして生まれたのでした。

 

ミニクーパーとレースの関係

ジョンクーパーによってチューニングされたこのミニクーパー。デビューするやいなや、ジョンクーパーの目論み通りレースやラリーでめざましい活躍を見せます。

わずかな排気量アップだけでこれだけの活躍を見せたミニクーパーですが、BMCは更なる高性能モデルの「ミニクーパーS」の開発に着手します。

 

・1993年 ミニクーパーS(1071s)/1071㏄(1.1L)

・1994年 ミニクーパーS(970s)/970㏄(1.0L)

・1994年 ミニクーパーS(1275s)/1275㏄(1.3L)

 

更なる高性能バージョンとして開発されたミニクーパーSは、排気量を変えながら3バージョンが登場。これは、レースの規定が排気量ごとにクラス分けされていたため。この戦略により多くのレースシーンでミニはめまぐるしい活躍を見せます。1968年にはBSCC(ブリティッシュ・サルーン・カー・チャンピオンシップ)で主なタイトルを総なめに。後に限定車として登場するミニクーパーBSCCリミテッドはこの活躍を記念したモデルです。

 

 

そして、ミニクーパーSの活躍で最も有名なのが、ポルシェなど名立たるライバルがエントリーするモンテカルロラリーでの活躍です。冬のアルプスの凍結路を走るこの過酷なラリーでミニクーパーSは1964年、65年、67年に優勝した事が今でも伝説的な活躍として語り継がれています。

 

1966年もミニクーパーSが1-2フィニッシュを果たすのですが、ヘッドライトの規定違反という不可解な理由で失格に。この失格処分は地元フランス車を勝たせるために主催者が判断したとも言われていますが、この結果が逆にミニの速さを物語る結果になりました。

 

これだけの大活躍を見せたミニクーパー。ミニという車が世間からミニクーパーという名称で認識されてしまったとしても不思議ではないわけですね。

 

しかしながら、1967年に当時のメーカーBMCがレイランド・グループと合併してBLMC(ブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーション)となると、経営合理化への方針転換が採択され、1970年代になるとラリーシーンからもワークスチームは撤退し、ミニクーパーもカタログから姿を消すことになります。

 

 

ミニクーパーの復活!

60年代に伝説的な活躍を見せたミニクーパーですが、80年代になると既にその栄光は過去の物となり始めました。

ミニクーパーは既にカタログから姿を消し、ミニ自体は生産が続けられていたものの人気に陰りが見え始め、当時はミニの生産中止の噂も聞こえるようになります。

 

しかし、ミニクーパーの復活を望む声は多く、80年代後半にジョンクーパーがチューニングしたコンプリートキットを開発、販売したことでミニの人気が再燃します。特に日本国内でのミニ人気は高く、本国イギリスよりも日本での登録台数が多いほどでした。ミニの生産が中止されずに済んだのは、この日本での人気があったからだとも言われています。

 

 

そして90年、当時のローバーが「ミニクーパー1.3」の名前でミニクーパーを復活させます。

1300㏄のエンジンにキャブレター組み合わせたこのモデルは、後に登場するインジェクションモデルと差別化で「キャブクーパー」と呼ばれています。

このミニクーパー1.3はサンルーフを装備するなどして限定1000台で生産されましたが、そのうち600台が日本での販売枠でした。この事からも、いかに日本市場がミニにとって大きかったかわかります。そして、ミニクーパー1.3は発表されるやいなや予約が殺到し、発売日前に全てが売り切れに。

 

このあまりの人気に、ローバーはミニクーパー1.3(キャブクーパー)の量産モデルを直ぐに市場投入します。サンルーフは廃止されるなど量産向けに仕様変更が行われ、カタロググレードとしてミニクーパー1.3の販売が開始されたのです。

 

 

このキャブレター仕様で復活したミニクーパーですが、92年にはミニが全モデルインジェクション化されたことで、ミニクーパーもインジェクションへと進化します。

名称も「ミニクーパー1.3i」へ変更され、2000年のローバーミニ生産終了までカタログモデルとして販売が続けられます。

しかしながら、インジェクション化される前のわずかな期間しか販売されなかったキャブクーパーは、希少性もあり30年近く経った現在でもかなりの人気モデルとなっています。

 

 

ローバーからBMWへ

60年以上のミニの歴史で、一番の転換期は2000年のローバーミニ生産終了。そして2001年のBMWミニの登場です。

その始まりは1994年にBMWがローバーを傘下に収めたところからスタートします。

当時のBMW社長ベルント・ピシェッツリーダーは、ミニの開発者アレック・イシゴニスの甥にあたる人物でした。

 

そして、BMWのローバー買収から3年後の1997年に、次世代ミニのコンセプトカーがジュネーブショーで公開されます。

それが、ローバーの「MINI SPIRITUAL DESIGN CONCEPT」(写真手前)と、BMWの「MINI CONCEPT CAR ACV 30」(写真奥)です。

 

 

シティコミューターとしての色合いが強いローバーのコンセプトモデルに対し、スポーツ色の強いBMW製のコンセプトモデル。結果的にはBMWコンセプトが強く反映され、BMWミニとして2001年に登場。日本では2002年より販売開始されました。

 

そして、ミニクーパーの生みの親であるジョンクーパーは、ローバーミニの販売終了に時を合わせるかのように2000年にBMWミニを見ることなく永眠されました。

 

関連ブログ:幻のミニたち、、、「SPIRITUAL DESIGN CONCEPT」&「ACV 30」

 

BMWミニになってからのミニクーパーの位置づけ

2020年現在、BMWミニは5つのボディバリエーションに、ディーゼルやプラグインハイブリッドも選択できるなど、多数のグレード展開となっていますが、BMWミニが日本で販売開始されたのは2002年当初は3ドアハッチバック(R50)のみ。グレードも「ミニワン」と「ミニクーパー」の2種類だけでした。

 

 

エントリーモデルのミニワンと、上位グレードのミニクーパーという展開で、ミニクーパーという名称こそ使われていますが、過激なチューニングが施されたわけではなく、あくまでスタンダードなグレードの車両でした。と言っても、その走り味は普通のコンパクトカーとは一線を画す仕上がりで、FFとは思えないほどクイックなゴーカートフィーリングは健在でした。

その後、さらなる上位スポーツグレードとして「ミニクーパーS」が登場しますが、発売当初ノーマルグレードにもミニクーパーという名称を使ったBMWの販売戦略は、ミニクーパーのネームバリューにあやかったのだろうと想像できます。

 

このように、クラシックミニでは、

  • ミニクーパー = スポーツモデル
  • ミニクーパーS = 最上級モデル

という位置づけだったのに対し、BMWミニでは、

  • ミニクーパー = ノーマルモデル
  • ミニクーパーS = スポーツモデル

というような位置づけへと変わっています。

また、BMWミニの販売台数比率を見ても、ミニクーパーとミニクーパーSが圧倒的に多く、ミニワンは少数。このことでますます「ミニ」といえば「ミニクーパー」という名称が定着することになりました。

 

現在では、ワン、クーパー、クーパーS、ジョンクーパーワークス(JCW)に加え、クーパーとクーパーSにはそれぞれディーゼルエンジン搭載モデルのクーパーD、クーパーSDも展開。クロスオーバー(F60)にはプラグインハイブリッドのクーパーSEも追加されるなどグレードの展開は多岐にわたります。

生粋のスポーツモデルではなくなったミニクーパーですが、BMWが主要グレードに「クーパー」を残すあたりは、ミニクーパーの知名度と人気の高さがうかがい知れます。

 

■BMWミニのグレード展開

エントリーモデルミニワン
スタンダードモデル

ミニクーパー

ミニクーパーD

スポーツモデル

ミニクーパーS

ミニクーパーSD

最上級スポーツモデルジョンクーパーワークス

プラグイン・ハイブリッド(クロスオーバー)

ミニクーパーSE

 

ミニクーパーとJCWの関わり

1990年代後半に次世代ミニの開発がスタートしますが、まったく新しいミニを開発する上でも、ミニとクーパーは深い関わりを持つことになります。BMWはジョンクーパーの息子であるマイククーパーに対し、レースでのノウハウと技術的知識の提供を要請し、初代BMWミニクーパーS(R53)のハンドリング、サウンド、フィーリングを決めることになったのです。

 

その後もBMWミニとマイククーパーの関係は続き、2006年には初めてのコンプリートカー『ミニクーパーS with ジョンクーパーワークスGPキット』を販売。名前が示す通り、ミニクーパーSに専用チューニングを施こした世界2000台(日本160台)限定モデルとして登場しました。

 

 

2007年にBMWミニはフルモデルチェンジを行い第2世代へ進化します。その翌年の2008年、ジョンクーパーの生誕85周年にあわせ、ミニクーパーSの更なる上位グレード『ジョンクーパーワークス』が正式にカタログモデルとして登場しました。

クーパーSと同じ1.6Lの排気量ながら、専用吸排気とターボ、コンピューターで211psを絞り出すチューニングが施され、トランスミッションはMTのみという硬派な仕様での発売でした。

 

 

以降、コンバーチブルやクラブマンにもJCWは設定され、2011年にモデルラインナップに追加されたミニクロスオーバー(R60)で、ミニはラリーへの復帰を果たします。

WRC(世界ラリー選手権)ではモンテカルロラリーで2位入賞するも資金難から往年のミニクーパーSようなめざましい活躍はできないまま撤退することになりましたが、ダカールラリーでは2012年から4連覇を果たすなど素晴らしい活躍を見せています(2014年大会は1位~3位をすべてMINIが独占)。

 

(画像引用:www.mini.jp)

 

現在、JCWはBMWとライセンス契約を締結し、JCWの車両開発にはジョンクーパーの息子、マイククーパーが参加しています。このように、JCWには往年のミニクーパーのレースの遺伝子が変わらず生き続けています。

2019年には世界限定3000台となる新型『ジョンクーパーワークスGP』を発表。この最高出力306PS、最高速度265㎞/hというとてつもないスペックのマシンにも、50年以上にわたりレースで培ってきた豊かな経験と知識が活かされています。

 

 

関連ブログ:ミニクーパーの最上級グレード「ジョン・クーパー・ワークス(JCW)」の歴代モデルを徹底比較!

 

ミニクーパーのラインナップ過去現代

クラシックミニ/ミニクーパー

1961年:ミニクーパー(997cc)

1963年:ミニクーパーS(1071cc)

1964年:ミニクーパー(998cc)

1964年:ミニクーパーS(970cc)

1964年:ミニクーパーS(1275cc)

 

1969年:ミニクーパー生産終了

1971年:ミニクーパーS生産終了

 

1991年:ミニクーパー1.3(1000台限定)

1991年:ミニクーパー1.3

1992年:ミニクーパー1.3i

1995年:ミニクーパー モンテカルLTD

1996年:ミニクーパー 35thアニバーサリーLTD

1997年:ミニクーパー スポーツパックLTD

1998年:ミニクーパー BSCC LTD

1999年:ミニクーパー 40thアニバーサリーLTD

2000年:(ラスト)ミニクーパースポーツ(MPi)

 

 

関連ブログ:最後のローバーミニをご存知でしょうか?

 

BMWミニ/ジョンクーパーワークス

2006年:ミニクーパーS with ジョンクーパーワークスGPキット(R53)

2008年:ミニ ジョンクーパーワークス(R56)

2010年:ミニ ジョンクーパーワークス チャンピオンシップ50(R56)

2013年:ミニ ジョン・クーパー・ワークスGP(R56)

2015年:ミニ ジョンクーパーワークス(F56)

2019年:ミニ ジョン・クーパー・ワークスGP(F56)

 

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